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ナベヅル原寸大モニュメント製作記

ツルは千年!フグは天然!国体は来年!

big.jpg山口国体を2011年に控えて、徳山駅前ロータリーに国体用の歓迎塔を設置する事になり、歓迎塔には周南ゆかりの「ツル」と「ふぐ」の入ったものを、というリクエストがありました。
平面的なサインでは面白くないので、頂上にツルを羽ばたかせた三面立体モニュメントをデザインし、ツルの部分はFRPで製作しました。これまで数々のオブジェを発泡スチロール素材で創って来ましたが、これがはじめてのFRP加工で、実際のツルよりもひと回り大きなオブジェを完成させました。
これが私のツルとの関わりのスタートです。


ナベヅルの徹底研究

資料.jpg徳山駅前ロータリーに羽ばたくナベヅルを創って間もなく、今度は観光資源としての「ツルの里八代」をPRしたいという依頼があり、本格的にナベヅルの勉強を始めました。
周南市八代は本州で唯一のナベヅル渡来地でありながら、年々渡来するツルが減少しているので、PRするためには原寸大のナベヅルをオブジェとして創って徳山駅構内に設置するプロジェクトがスタート!
アイキャッチとしての前回創ったオブジェと違い、至近距離で見る為のオブジェなので、できるだけ本物に近づけるために、発泡スチロール素材ながら、ナベヅルの羽の質感をどうやったら実現出来るか、相当悩みました。


プランニング

イメージ+簡易図面.jpg改札内側モニュメント.jpg
完成イメージのラフスケッチと簡易図面です。2ヶ所に設置するということなので、「飛行状態のナベヅルと普通の姿勢、餌をついばむ姿勢」の比較的創りやすい形状のものと、「羽を広げた求愛の状態」の難易度の高い形状のものにもチャレンジしてみる事にしました。
発泡スチロールを削り出して創っていく方法なので、パーツの分割の方法も十分考えなければなりません。
でも何もお手本の無いモノを創るのはめちゃめちゃ楽しいですね。


作業開始

02.JPG03.JPG一口に発泡スチロールといっても、発泡率の違いで全く堅さが違ってきます。今回は原寸大のツルなのでパーツが小さくなり、コーティングするFRPも薄くしなければならないので、発泡率40倍の発泡ポリプロピレンブロックを特注しました。これは相当堅い!
発泡スチロールブロックを最初に切り出すヒートカッターも自作しました。

形状を削り出していく-1

04.JPG05.JPG写真の資料のみで研究していましたが、八代のツル憩いの里センターに行った時にナベヅルの剥製が展示してあり、思わず「小っちゃ!」とびっくりしてしまいました。そのイメージも頭の中に叩き込んで形状を削り出していく作業です。
この段階はヒートカッターで「溶かして」発泡スチロールを切っていく作業です。発泡スチロールは通常のカッターでは切れないので、「溶かす」か「削る」しか方法が無いのです。


形状を削り出していく-2

06.JPG07.JPG事務所の中で作業するので、もうぐちゃぐちゃです。削りすぎると元も子もないので、慎重に作業しています。写真には写っていませんが、ものすごい量の発泡スチロールのゴミも発生します。まだまだ作業的には初期の初期、これから気の遠くなるような時間がかかります。


発泡スチロールの唯一の欠点

10.JPG09.JPG今回の製作に使う電動工具です。でも実は発泡スチロール造形で最も使う道具は、「金たわし」です。ヒートカッターでの削り出しが終わった時点では、まだ理想の形状からはほど遠いので、後はひたすら「ガリガリ」と金たわしで削っていくのです。この作業は部屋の中ではとても出来ません。全身が白い粉で真っ白になります。発泡スチロールの唯一の欠点が、この粉まみれになる点なのです。作業風景は、あまりにも悲惨なので掲載出来ません…


軽く、面を均一に

11.JPG12.JPGようやくツルらしいラインが出て来ました。羽の部分も、薄い部分で5ミリくらいまで削り込んでいます。このツル、細く長い足(片方のみ)で自立させなければならないので、ある工夫をしています(企業秘密と言うほどではありませんが…)。そのために発泡スチロールで軽く創る必要があるのです。金たわしでの荒削りも限界があるので、次に電動サンダーで表面を滑らかにしていきます。


パテ&FRPコーティング-1

13.JPG15.JPG次の段階は、パテで表面の凸凹を消す作業。ある程度平滑になったら、FRPをコーティングします。ガラス繊維を樹脂で固めて強化プラスチックの層を形成する作業です。発泡スチロール用のレジン樹脂に硬化剤と効果促進剤を微量混ぜてガラス繊維に染み込ませます。本当は屋外でやると気温の関係で硬化が早まってしまうのですが、場所が無いので自宅ガレージでやってます。ひとりでやるとものすごい慌ただしい作業です。


パテ&FRPコーティング-2

14.JPG16.JPG自宅の玄関前は薬品だらけです…。出来るだけ軽くするために、FRPは通常は2〜3層重ねるところを強度が必要な部分以外は1層のみにしています。それでも羽の接合部分にパテを使い過ぎて重量が想定外になってしまったので、やむを得ず「緊急手術」で胴体の部分の発泡スチロールをほじくり出しました。それにしても炎天下での作業なので死にそうでした。


研磨

17.JPG18.JPG樹脂を乾かして、とりあえず造形を確定させますが、FRPをコーティングした状態は凸凹がわかりにくいので、全体を同色の塗料で塗ってみます。
色は何でもいいので、倉庫にあったシルバーのスプレーで全体を塗ってみました。さらに小さな凸凹や表面の平滑度をチェックする為です。気になる凸凹には、さらにパテを打ってサンドペーパーで研磨します。


いよいよ腕の見せ所

19.JPG24.JPGナベヅルオブジェの最大の難所です。
原寸大オブジェを創る最初から、ツルの羽の一枚一枚をエアブラシで描くと決めていたので、やっとここまでたどり着いた、という感じです。ナベヅルは色彩的には黒一色という「ものすご〜く地味」な素材なので、逆に繊細なタッチが要求される作業です。しかも光沢塗料を使うと本当にプラスチックっぽくなってしまうので、半光沢に調合して質感も出しています。


いよいよ腕の見せ所

23.JPG25.JPGエアブラシ塗装は繊細な作業なので神経を使いますが、真夏の炎天下でのFRP積層作業に比べれば楽なものです。


地味な作業です

21.JPG20.JPGいよいよ終盤です。とにかくこのツルの完成形は自分の頭の中にしかないので、足のパーツもいろんな素材を使って「それっぽく」するのです。爪は木材の削り出し、足はアルミパイプ、関節はエポキシパテを使用。太さを調整する為に、この上から黒いビニールテープで巻いていきます。


いよいよ腕の見せ所

22.JPG26.JPGさすがに展示台はサイズ的に事務所では創れないので外注です。


一応名前がついています。

完成1号_横.jpg1号完成2号_前.jpg2号完成3号_斜め横.jpg3号完成4号_斜め.jpg4号完成5号_下から.jpg5号


JR徳山駅へ

27.JPG28.JPGだだっ広い徳山駅に設置すると、あまりインパクトが無くなってしまう…
もう少し背景にパネルを置いたりしないと目立たないですね。回りの竹垣は、須々万のふれあいの森のボランティアの方々に作っていただきました