一冊の本からデザイン業界のこれからを考えた。 wizzplanning, 2005年5月12日2024年3月29日 本屋で衝動買いした本「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」を一気に読んだ。 何のことはない、初心者向けの会計学入門の本だった。でも結構話題になっているらしい。 デザインや広告宣伝を仕事にしているからこそ、タイトルに反応してしまって買ってしまったが、著者も確信犯的にこのタイトルを付けて、会計に興味がない人にも買ってもらおうという意図があることを書いていた。 小さいながらもデザイン事務所を経営しているから、毎年見たくもない決算書を見てお金の流れはだいたい分かるようになったが、苦手な分野であることに変わりない。 この会計学の本には、商売の本質である、利益を出すためには、 「売り上げを増やす」 「費用を減らす」 の、二つの方法しかない。 という、すごくもっともだけど、会計学の基本はこれだけだ、ということに終始している。 デザインの仕事って、費用を減らすことを考えると、その時点で終わりのような気がする。費用を減らす=ネガティブな発想。ネガティブな姿勢からは新しいモノは生まれないと思う。 費用を減らす努力をするなら、その努力を、売り上げを伸ばすことに費やすべきだと思う。 私のクライアントで、もう9年間もお付き合いさせていただいているオーディオ専門店の社長は、お客様に夢を与える商売の店の中は、たとえお客様がいなくても照明を節約したりとか絶対してはいけない。経費を節約することよりお客様に明るい店内を楽しんでいただくことが一番大切という姿勢を貫かれて、今でも日本で有数の販売実績を誇っておられる。 多分、デザイナーやクリエイティブな仕事をしている人は、銭儲けには縁遠い人が多い。 自分でも自覚しているが、友達からも、おまえは絶対金儲けは出来ん、と言われる。銭儲けしようと思ったら、デザイナーなんかやってない!っちゅうの。 しかし、最近は少し違う。 私の街にはかつて、デザイン事務所というモノがなかった。 印刷会社が印刷の仕事を受けるために、デザイン「も」やるのではダメなのだ。デザイナーと言えば聞こえはいいが、社会的には何の保証もない、資格も必要としない中途半端な職業である。 私は一般企業でサラリーマンを11年経験した後に独立したので、組織の中での上下関係を経験したり、人脈もそこそこあったことが今役に立っているが、若い世代でデザイナーになりたい場合は、これからは非常に難しくなってくる。 デザインを、どうアピールするか、デザインの価値をプレゼンテーション出来る能力・個性がなければ飯を食っていけない時代になってきた。 そして、パソコンの登場で、デザインするのに便利になったと思ったら、逆にいろんな事ができすぎて、制作物が安っぽく見えてくるのは、悲しい現実である。 若い世代の人たちが、デザインの仕事に興味を持ったり目指したりするために、デザインの価値をあげるのが我々の使命になった。 4月からは山口県デザイン協会の会長という要職を受けることになったので、なんとか業界を変えていきたい。 楽しい業界に。 未分類